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虐待被害者が「親になり、負の連鎖を乗り越える」 映画『ひとくず』監督が込めた思い
2020年03月09日 10時26分

虐待を受けた子を救い、自らが受けてきた虐待の苦しみを乗り越えていくーー。児童虐待をテーマに人と家族の再生を描いた映画『ひとくず』が3月14日より公開される(渋谷ユーロスペースほか)。

脚本、主演を務める上西雄大監督は「虐待を受けてその痛みを知る人が、同じように痛みを感じている相手を愛し、自らも救われていく。重く悲しい映画ではなく、温かい気持ちで劇場を後にしてもらえると思う」と意気込みを語る。

虐待を受けた子を救い、自らが受けてきた虐待の苦しみを乗り越えていくーー。児童虐待をテーマに人と家族の再生を描いた映画『ひとくず』が3月14日より公開される(渋谷ユーロスペースほか)。

脚本、主演を務める上西雄大監督は「虐待を受けてその痛みを知る人が、同じように痛みを感じている相手を愛し、自らも救われていく。重く悲しい映画ではなく、温かい気持ちで劇場を後にしてもらえると思う」と意気込みを語る。

●虐待の実態を聞き「その日の晩に脚本を書きあげた」

犯罪を重ねる男・金田(上西雄大)が空き巣で入った家に、ひとり残されたのが虐待を受けていた少女、鞠(小南希良梨)だった。食べる物もなく、電気もガスも止められている家に置き去りにされた少女の姿に、金田は不器用ながらも彼女を救おうと動き出すーー。

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「ひとくず」は、虐待の痛みを知る者が人を愛し「負の連鎖を乗り越えていく」姿を描く。

映画は、新しい作品作りのため発達障害について児童精神科医に取材する過程で偶然に生まれた作品だった。児童相談所の嘱託医を務めるその医師から児童虐待の実態を聞かされ、上西監督は大きな衝撃を受ける。

「あまりにショッキングな話で、取材を終えても、気持ちをどこにぶつければいいかわからなくなりました。そして、その日の晩に脚本を書き上げました。虐待の凄まじさだけでなく、医師が見慣れた光景かのように淡々と話されていたことも、被害の深刻さを表しているようでショックを受けました」

小さな鞠の身体に、母親の交際相手にアイロンを押し当てられた痛ましいやけどの跡がある。これは医師から聞いた実話だという。「その子は、鞠のように1つだけでなく、たくさんのアイロンを押しつけられた跡があったそうです」。

●「負の連鎖を乗り越えていくこと」

児童精神科医の話を聞き、中でも印象に残ったのが、虐待の「負の連鎖」だった。物語が進む中で、主人公の金田、鞠の母親・凛(古川藍)も虐待を受けていたことが徐々に明らかになっていく。

「虐待を受けた者が、親になって自分の子にも虐待をしてしまう。でも、そうならないこともあるのではないかと。虐待の痛みを知っている者が、同じ思いをしている誰かを愛して助ける。そこに希望をよせました」

「人間は人からうまれて、家族の中で生きる。もし一度はそれがダメになっても、もう一度、別の家族と立ち戻っていく希望を描きたかったんです」

●母に対する暴力を見て育った上西監督画像タイトル

上西監督は「暴力のある家庭の時間の流れ」の中で育ったと話す。

「物心ついた頃から、父親の母親に対する暴力が日常的にありました。それを見て子どもは怯えるし、母親を守ろうと父親と口論したこともある。ただ、僕ら子どもに対する暴力は一切なかったんです。耐えかねた母は、僕が高校を卒業する頃やっと離婚を切り出しました」

「虐待や暴力のある家庭ならではの時間の流れ方は自分も体験しているので、児童虐待についても想像する糸口になったのかもしれない。児童虐待は子どもの命を奪うもので、想像を絶するものです」

映画に込めたのは、親としての愛し方やふるまい方がわからなくても「人間には良心がある」という願い。

そして鞠にとっての金田、金田にとっての刑事のように、血のつながりがない第三者から人は愛されたり、信じてもらえたりすることで、「負の連鎖を乗り越えていくことができる」という希望だ。

上西監督が作品にこめた「虐待を連鎖させない」という強い意志。バトンタッチされた観客は何ができるのか。

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■公開情報 出演:上西雄大 小南希良梨 古川藍 徳竹未夏 工藤俊作 堀田眞三 飯島大介 田中要次 木下ほうか
監督・脚本・編集・プロデューサー:上西雄大
http://hitokuzu.com/
3月14日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開 予告編 URL https://youtu.be/2t8WCC8ghwE

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