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イラク日報が「まるで文学」と評判 国が公表したけど、出版しても良いの?
2018年04月26日 09時17分

防衛省は4月16日、イラク派遣中(2004年から2006年)の活動報告(日報)を初めて開示した。政府は自衛隊の活動は「非戦闘地域」だと説明したが、日報からは「戦闘」「銃撃戦」など厳しい状況であることが伝わる。

しかし、ネット民は、別の視点からもこの日報を読んだ。

「いやマジでイラク日報面白すぎないか 」「イラク復興日報が面白すぎて仕事にならない」「日本日記文学の系譜に連なる軽妙な筆致で読者を歓喜させている」

評判なのだ。それもそのはず。日報には、自衛官らしく情勢を伝える描写のほか、次のような日常のエピソードも散りばめられていたからだ。

「最近対応に困っているのが『ウインク』である。きれいな金髪の女性が『ウインク』してくれれば、うれしいのだが、残念ながらウインクするのは、額の面積が通常より広いオヤジか、ヒゲヅラのオッサンばかり…。オッサンが相互にウインクする光景の中に自分がいることが許せないから、私がウインクしたことは一度もない」(「バグダッド日誌」11月3日より)

公開された日報には、こうしたユニークなエピソード、それに対する感想が率直に、時に文学的な表現で書き込まれていた。そこでネット上では「非常に読み物として面白いので陸自公式として出版してくれないかな」との声も上がっている。しかし、このような日報は、書籍として出版はできるのだろうか。日報の著作権について、齋藤理央弁護士に聞いた。

防衛省は4月16日、イラク派遣中(2004年から2006年)の活動報告(日報)を初めて開示した。政府は自衛隊の活動は「非戦闘地域」だと説明したが、日報からは「戦闘」「銃撃戦」など厳しい状況であることが伝わる。

しかし、ネット民は、別の視点からもこの日報を読んだ。

「いやマジでイラク日報面白すぎないか 」「イラク復興日報が面白すぎて仕事にならない」「日本日記文学の系譜に連なる軽妙な筆致で読者を歓喜させている」

評判なのだ。それもそのはず。日報には、自衛官らしく情勢を伝える描写のほか、次のような日常のエピソードも散りばめられていたからだ。

「最近対応に困っているのが『ウインク』である。きれいな金髪の女性が『ウインク』してくれれば、うれしいのだが、残念ながらウインクするのは、額の面積が通常より広いオヤジか、ヒゲヅラのオッサンばかり…。オッサンが相互にウインクする光景の中に自分がいることが許せないから、私がウインクしたことは一度もない」(「バグダッド日誌」11月3日より)

公開された日報には、こうしたユニークなエピソード、それに対する感想が率直に、時に文学的な表現で書き込まれていた。そこでネット上では「非常に読み物として面白いので陸自公式として出版してくれないかな」との声も上がっている。しかし、このような日報は、書籍として出版はできるのだろうか。日報の著作権について、齋藤理央弁護士に聞いた。

●「表現も多彩で著作物性はあると考えられる」

ーーこの日報には、著作物性があると評価できるのでしょうか。

日報も報告書という性質から表現の幅は広くない部分もあるかもしれません。しかし、今回公開された日報は文書量も多く、特にバグダッド日誌などインターネットで評判になっている部分は表現も多彩で著作物性はあると考えられます。

ーーその場合、著作者は誰になるのでしょうか。

権利が帰属する著作者が自衛隊員なのか、国なのかという問題ですね。この判断には様々なポイントがありますが、そのひとつが「国の名義で公表するべきものなのか、自衛隊員個人の名義で公表するべきものなのか」という点です。

そもそも、日報は公開が予定されていた文書ではありません。今回のように公表された場合は、国、あるいは省庁の文書として公表されていると考えられますので、国を著作者とする著作物と判断される可能性が高いでしょう。

●「国(あるいは自衛隊員)に出版の許諾をとる必要がある」

ーー出版を希望する場合は、著作者である国と交渉することになりますか。

問題となり得るのが、著作権法13条各号です。

13条は、国や国の機関が作成した著作物について、例外的に著作権が発生しないものを定めています。しかし、著作権法13条各号で著作権の発生が制限される著作物は法令や判決、あるいはこれらに準じたものなので、イラク日報はこれに該当しないでしょう。

最後に、著作権法32条2項についても検討します。32条2項では、国や公共機関が一般への周知を目的として作成した報告書などの著作物について、説明の材料として刊行物に転載できるとされています。しかし、今回のイラク日報はもともとが、公表や一般への周知を目的につくられた文書ではなく防衛省内の内部報告書の類と考えられますので、この規定の適用もないでしょう。

そうすると、通常の著作物と同じように、著作者である国(あるいは自衛隊員)に対して出版の許諾をとる必要があるでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

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